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現在

11月上旬から中旬にかけて引っ越しの予定があり またそれに伴う準備や諸々で更新が滞っています。 新しい環境が決まり、生活が落ち着いてきたら戻ってきたいと思っています。 もうしばらく先の未来でお会いしましょう。

#54『午後、骨の鳴るような』

少年はひとりで電車に乗っていましたが、まだ、全部開けられないでいるその目に見た床では、列車の立てる「ゴタン、タン」という振動を伴った音が脈打って、鼓動のように車内を渡っていくかのようでした。 それから床へ落ちる陽の光が、通り過ぎるビルや電柱の影を映して、点滅するように続いているのでした。 まばたくように進む午後の車内で、少年は伸びをす

#53『あの日とは別の夏』

仰向けになって、熱を持ちはじめた床板へ、背中の全部をくっつけて、高く上げた指先を反らせてみている。指はきれいに動く。 そのむこう。天井には、海岸線のようなシミがある。去年よりも海の水位が上昇してて、海域を広げているような気がする。 おんだんか。 扇風機がぶーんと首を振り、電灯からぶらさがる紐の先にくくりつけられた木製の、天体が、ちいさ

#52『夜に沈む町にピアノ』

三階通路の踊り場、手すりの前に立って、サンダル履きのあの子が、ワンピースの裾を揺らし路地を小走りに行く、そんな後ろ姿を見おろしていました。 ここより先が、やってこなければいいのに。ずっとこのまま。今のまま。ただ、ここより先の出来事が、ここへやってこなければいいのに、と。 今はまだ、階下の路地に、白いソックス履きのような猫の横断と、サン

#51『風になると目を閉じる』

この部屋の窓から見下ろすと、地上までは四階ぶんの高さがある。狭いベランダ菜園には、父の作るミニトマトが実っていて、いくつかは赤くなりかけていた。スチール製の手すりに、まだツルの先は巻きつきたそうにしている。 ここから見える団地の壁はどれも灰色だ。それが日の光に焼かれて、発光しているようにみえる。斜向かいになる棟の角部屋に、日除けのゴ