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星をあげる

by 郷木 鳥夢

 なんにもなくて、なんでもない、そんな日曜日の、午後に泣いたら、待ち合わせたように雨も降りだして、洗濯物が窓の外で濡れていくのを見ることになりました。

 干してあったシャツの肩が、ゆっくり重くなっていくのがわかります。肩が荷を背負ったせいか、あっという間に日も落ちて、ぜんぶ夜になりました。

 丁度そのとき、たまたま他人だったから、わたしたちは、この感情と一緒に、ひとつの家族になりました。

 いい感じに田舎の家だから、一番近い天体までは、車に乗って、夜をずいぶん走らなくてはいけないので、わたしたちはとても親密な家族になれたように思います。

 宇宙空間を行くロケットと同じ、銀色の小さな車へ乗り込んで、発射台から打ち出すように、アクセルを踏んでしばらく待つと、国道軌道沿いの星すなわちコンビニエンス・ストアが、夜の中から彗星のように現れて、そして現れた時と同じ速度で遠ざかっていきます。

 どれだけたくさんの秘密を持っていたとしても、そんなのいくらでも夜に投げてしまっていいくらい、この空間は広大です。監視する街灯もないですし、大きな声だって、窓から投げ放題なんです。

 わたしたちは親密な家族になりました。どうすれば模範的な住所になれるのかわからないけれど、ひとつの親密な家族になってからは、わたしたちはこれ以上何も引かなくていい、唯一最小の、さみしい星です。

 夜を星から見上げたときは、空にはすでに星の数ほどの涙があるので、とうとう笑ってしまうのです。それらはあらかじめ多すぎて、実はとてもありふれていて、一つ残らず正しい他人ごととして、明滅し合っていたのですから。

 なんでもある、なにもかもある昨日なんてなくても、朝は来ちゃうし、シャツも乾く。ある意味残念かもしれないけれど、いずれ笑ってしまうんです。

 銀の河でひとつ、短かな現象、泡のひと粒。

 だから、きょうも隣に、こんな風に寝息が聞こえるという偶然に、わたしは感謝していきたいと思うのです。唯一最小の星にいる、ありふれた時間を、奇跡的にくれていることに対して。

 わたしたちは、あの感情と一緒に、ひとつの家族になりました。だからわたしが有る限り、この星が、ここあるという、たったひとつの理由をあげます。

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