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車窓上映列車

by 郷木 鳥夢

 きっと終わりだけが、迎えに来てくれるほうのものです。

     ◇

 冬の夜。もう何年も遮断機の下りた踏切を前に立って、とてもとても長い列車が過ぎて行くのを見ていました。

 始まりは、ここから去って遠くなるほうのものなのですから、終わりだけが、来てくれるはずのものなのです。

 一番丈の長いコートの、一番深いポケットへ手を突っ込んで、一等長い夜行列車を眺めています。

 四角い窓の光をぱたん、ぱたんと、暗い雪の上に落としつつ、スピードを落として通過していく列車を見送っていると、もう何年こうして立っているのか、わからなくなるときがあるのです。

 もしかしたら、とても短いことなのかもしれないな。そう思いながら、何年もこうして踏切に立っているのです。

 夜の雪の上へ、列車から溢れる四角い窓明かりが、なんだか映画のフィルムを一コマずつ確認するような速度で流れて行きますが、その光の中には、わたしの黒いブーツのつま先が雪にすっかり埋もれています。

 ブーツの先を持ち上げて、積もった雪をぽそっと落とすと、それは四角い窓明かりの中で、知られぬちいさな山になり、そのまま動かなくなります。

 ここは、選択肢のうちの、選ばれなかったほうのように続きます。

 夢は、ずっと夢でした。ここにない夢を見るのは、ここにいることのできる、短い間だけなのですけれども。

 一等長い長い夜行列車が、四角い窓の明かりをぱたん、ぱたんと、雪の上へ落としながら通過していくのを見送っています。

 踏切の前に立って、足下に連続する窓の光の中にいます。

 今度はブーツのつま先に雪をのせて、それを光の外へ放り出してやりました。

 宛てる先は、帰り道と同じで、先の未来にしか作られません、なにもかも遠ざかって行きますが、終わりだけがきっと、ここへやって来るほうのものです。

 終わりに近くなった夜空には、何かと星が多いそうです。聞いた話ではありません。今、そう決めた話です。

 持っていた杖を高く上げて、冬空に散らかった星をかき回すと、星の角が噛み合い、しゃらしゃらと音を立てながら、歯車のように回り出すのが好きです。

 それをさらさら風のように、しずかに笑って見ていましょう。

 そうして、こんなふうにやってしまうことを、打ち明けることのできるあなたが、どうか、もう少し、そこにいてくださいますように。

 

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