LOG IN

七夕の雨

by 郷木 鳥夢

 本当は、あれからそんなに、眠ってはいないって、いうことだけをわかっている、真夜中の部屋に、雨の音だけ降っていました。

 世界はゆっくりと水の底へ沈んでいくところです。

 ひっくり返したコップの中に横たわっているみたいで、雨の音は、音を高くしながら、徐々に上擦っていく気がします。

 ここは隔離されて、もう電波も届かない場所。暗い宇宙の、泡の粒の中のようなものです。

 さっき、眠っていた間には、とても悲しい夢を見たんです。

 星座盤を手にして見上げた夜空に、記されている配列の星が、ひとつもなかったっていう、そういう夢だったんです。

 射手座の矢尻と、蠍の心臓を結ぼうとした

そのときに、星の配列の何もかもが、バラバラだってことに気づいたんです。

 ああ、この星空は、どうやらわたしの星とすべてが違うだなんて、なんていう気持ちだったでしょう。

 大切なところから完全にちぎれてしまった場所に、わたしは来てしまったんだって、思って、関係性のほどけた星空の下で、静かに泣いていたんです。

 そうして落とした涙に、もっともっと沈んでいくことさえ目にしながら、止まらない涙は続いていたんです。

 やがて泣いたまま目を閉じるようにして、雨の降る、こちらの真夜中へ目を覚ましていました。

 本当は、あれからそんなに、眠ってはいないって、いうことだけをわかっている、真夜中の部屋にいて、ただ続く雨の音を聞きながら、ぼんやりと思い出しています。

 知らない星空の下に忘れてきた、わたしの星の星座盤のこと。

 誰かが、あっちで、まるで見たことのない配列を示す星座盤を見つけて、そこに見入る姿、その空想と一緒に。

 こちらはゆっくり水の底へ沈もうとしているところです。

 ひっくり返したコップの中に横たわって、いよいよ音を高くした雨の音が、上擦ることをやめ、ぴったり収めるときを知りながら。

 ここは電波も届かない場所。暗い宇宙の、泡の粒の中のようなところです。

 もう一度、あの、まるで共通しない星の配列の下へ行くことは、きっとできないのでしょう。

 だから、ひとつだけ願っています。願うことは、こちらでも手放さなくていいものですから。

 忘れて来たわたしの星の星座盤が、決してでたらめなんかじゃないってことが伝わりますように。

 そのたったひとつだけを、いま、こうして願っている、こちらは、音を高くした雨の音が、これから上擦ることをやめ、ぴったり収まるときを知りながら続く、永遠に等しいほどの、一瞬の上にいます。

OTHER SNAPS