LOG IN

小雨日和

by 郷木 鳥夢

 雨を待っていたのです。

 洗濯物を、日の出る前から干した後で、本当は雨を待っていたのです。

 風は先に雨の匂いを運んでやってきました。

 本当は雨を待っていたのですが、洗濯物は雨より先にやって来た匂いの中を、散歩するように揺れていました。

 そうやって、雨を待っていたのです。

     ◇

 人の寝静まった時分に、起き上がって、座って、ウィスキーを水で割って、それから、チーズの角を齧りながら、本を開いた、昨日の夜。それはほとんど、今日の朝で。

 昨日は、いつのまにか住む場所を間違えていたような出来事の中にいたのです。

 たくさんの言葉が飛び交う、透明な箱の中で、濡れない雨に打たれているようなところにです。

 わたしはそこで、世界が移動することに、抗ってとどまるところの話を聞いていたかった。

 木製の月が、空で割れる音を聞いていたかった。

 非常識からさえもはぐれたあなたの

を、聞いていたかったのです。

 なのに、なぜでしょうか。それでも一日が、いつものように端を揃えて終わったのです。

 本音に近い姿とは、少しだけ違う片割れを、収納しかねない仕組みを持っていました。

 何かが違うと思うのに、おおよそが同じもので出来ているせいで、同じかどうか確かめているうちに、すむ場所を間違えてしまうことがあるものです。

 何かが違うと思うのに、おおよそが同じもので出来ているせいで、同じかどうか確かめているうちに、すむ場所を間違えてしまうことがあるものです。

 わたしという他人や、あなたという行列が、あのとき確かに存在していたはずなのに。

     ◇

 雨を待っていたのです。

 洗濯物を、日の出る前から干した後でも、本当は雨を待っていたのです。

 風は先に雨の匂いを運んでやってきましたが、それでも洗濯物は、先にやって来た匂いの中で、散歩するように揺れていました。

 本当は、雨を待っていたのです。

 雨を待っていたのは、洗濯物を干しているからで、洗濯物が揺れているのは、雨を知らせる風が吹いていたからです。

OTHER SNAPS