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太陽が完璧

by 郷木 鳥夢

 強く足を踏み出して、大きく傾く太陽の光を分厚く、左の頬に浴びて歩く、その足音が作り出すリズムはいい調子です。

 公園で、たくさんの元気なバイバイが、風船を膨らませるように、夏の夕暮れを一層拡大させていきます。まだ揺れている、無人のブランコの行ったり来たりが、夕焼け色の中に残されています。

 そんな公園を通り抜けて、正面のY字路をどちらへ折れるかというそれだけの帰り道、そこで、おばあさんが猫を抱いている姿を見かけたら、「抱っこされてる猫」っていう、子どもらの声があがりました。

 声のほうをパッと向けば、過去も反転したような明るさの、そこで太陽が完璧です。

 どっかの子どもらは、わっ、とそれぞれ見つけた何かへ向かって走り出した、ようにも見えるのですけれどきっと、彼らを呼んだ何かに引っ張られて行くんだと、見直したらすぐに空には太陽が完璧で、赤いひかりで、急加熱されたトマトみたいに内からぷつっと破裂音……薄皮を突き破って、膨れ上がった完熟直前の気持ちが、弾け飛んで、あっという間に中の芯の奥の深みまで、あそこから続く夕焼けの一部です。

 もう、世界中がスープですよ。具材のような出来事が、ぼろぼろと浮かんでくるY字路で、トマトスープは境なんてなくしてまとめて、言ってみれば考えの内側を、子どもらの影が跳ね、膝から降りた猫が伸びをし、行き違う標識が太陽の行く反対側へ影を付け、ゆっくり回転するように巡り始めました。

 何もかも混ざるように、何もかもを目にしながら、何もかもとこんな風に出会えればいいのになって、そんなここはY字路ですから、足音が作ってきたリズムをそのままに、この先くらいは自然に流れ行くほうを選びましょう、と。

 選んで正面に捉えた、完璧な太陽は、胸から飛び散ったトマトの中身と溶け合って、さらにもっと煮詰められていくところです。個人の考えからあの太陽までのあいだには、ひとつの国境も見あたりません。

 赤く熱く大きく傾く太陽の光を分厚く、大鍋の中をゆっくり回りながら、ひとつの、日だまりスープのなかには、もう、内も外もありませんから、ぼくときみもすでに他人じゃないんです。

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