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雪とペチカ

by 郷木 鳥夢

「うわ、雪だ」と、声に出しました。

 額縁のような窓枠の外に、狂い咲く小花のような雪でした。

「そう、雪」という声が返ってきました。

 部屋の奥の、ぱちぱち音を立てて燃えているペチカの前から動こうとしない声の主は、でも、雪のことをわかっているようです。

 ですから「行きますね」と、声を掛けました。雪の向こうに別の小屋が見える───あそこまで行ってみよう、と。

 それには「ああ、行きなさい」と声が返ってきました。ペチカの火を正面にしているせいか、背中は影のようで、それに振り返って見ようともしません。

       ◇

 ドアを開けた先では、空間へ咲いた雪の花が、満開です。

 手前の花々は大きく左に旋回し、遠くの花々は精密な動きで右に旋回しています。まるで巨大な時計です。巨大な時計が仰向けて大地に置かれ、雪が秒針に代わって、時間の経過を示しているかのようです。

 雪に満たされた真っ白な土地を、向こうの小屋へ向かって歩き出した者の正面で雪は止まり、多くは融けずに、そのまま積もっていきました。

 正面が真っ白になって、背中だけに黒く色が残った頃、小屋までたどり着き、ドアは開きました。

       ◇

「ああ、ついたね」と、背を向けたまま言いました。

 ペチカに薪を足し、火を当てていると、背の方から「うわ、雪だ」という声があがりました。

 ですから背を向けたまま、「そう、雪」と答えたのです。

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